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独マインツ 古き良き酒場に酔う

2017年04月05日

 ドイツ西部の小都市マインツに住むドイツ人記者の案内で、地元のワイン酒場のドアをくぐった。「この街では同じテーブルに座った見知らぬ客同士がうち解けて話すんだ」

 彼の説明通り、店内は和気あいあい。さっそく建築家の老紳士が「私はいつか東京に行って、最新の建築を見ようと思っている」と話し掛けてきた。

 そうかと思えば、サッカーファンの一団から「オーザコはいいな」と声がかかる。大迫(おおさこ)勇也選手が所属するケルンの応援団だった。トイレで隣り合った男性は「俺がこんな小さかったころはオクデラが頑張っていた」。奥寺康彦氏のドイツ時代のプレーを熱心に説明し始めた。

 これまで、ドイツの人々について、初対面ではやや素っ気ないとの印象を持っていたが、この店の人たちはまるで違う。

 周りから「おまえのドイツ語は酔えば酔うほど良くなる」と、おぼつかない初歩のドイツ語をおだてられ、ついワイングラスを何杯も空けてしまった。案の定、翌日はひどい2日酔い。でも、地方に残された古き良き酒場の雰囲気は、少し病みつきになりそうだ。 (垣見洋樹)