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中国・丹東 おふくろに会いたい

2017年05月03日

 出張していた北朝鮮と国境を接する中国東北部・遼寧省丹東で、夕食を取ろうと、市内のしどけない韓国料理店に、地元の知人と足を運んだ。テーブルにメニューを届けに来た若い男性に、料理について尋ねると、訛(なま)りのきつい朝鮮語の説明が返ってきた。

 「北朝鮮の人か」と聞いたところ、こくりとうなずいた。知人は「こいつは脱北者だ」と言葉をつないだ。もちろん不法滞在。しかし、知人はこうしたケースに慣れているのか、気に留める様子もなかった。

 質問を重ねたところ、男性は意外にも、身の上を素直に話しだした。20代前半。1年ほど前、国境沿いの両江道の故郷から川を越えてきたという。「中国の方が居心地がいいので、そのまま住み着いた」とか。

 男性の父親は数年前、病で亡くなり、故郷には母親と妹が暮らしているという。「寂しくないか」と問うと、少し時間を置いて「おふくろに会いたい」とひと言。

 店の奥から「何をやってんだ」と店主らしき男の声が響いた。男性があわててテーブルを離れようとした際、手を差し出すと、彼はニコリと笑って握り返した。 (城内康伸)

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