2017年06月01日
パリ中心部の百貨店で日曜営業が始まっている。政府が指定した観光地区で営業が可能になったのだ。フランスは世界随一の観光大国だが、近年、週末にロンドンなどに客を奪われてきた。それを「指をくわえて見ていられない」というわけだ。
渡仏当初は日曜に店が閉まっていることに戸惑った。ふと缶ビールが飲みたくなった時、たばこがなくなった時・・・。「日本ならコンビニがあるのに」。何度思ったことか。
留学中、この話題は教室で論争になった。コンビニなどの「便利さ」「快適さ」を主張したが、ドイツ人女子学生は「土曜までに買えばいい」「家族や友人とゆっくり過ごすわ」。
あれから3年半。確かに充実した生活とは物質的な便利さや豊かさだけではない。そんな欧州人の考え方も分かってきた。
カトリック色が濃いフランスでは日曜は「休息日」。1世紀以上前に制定された労働法でもこう規定されてきた。とはいえ今はヒト・モノ・カネが簡単に国境を越える時代だ。日曜営業の導入は、グローバル化によって伝統的な欧州社会の姿までもが変わりつつある「兆し」なのかもしれない。 (渡辺泰之)