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ロンドン 「専用トイレ」の秘密

2017年06月09日

 卓上ランプ1つしかない薄暗い小部屋で、背中を丸めたスーツ姿の男が、必死の形相で受話器にしがみつく。英財務省の地下にある「戦争博物館」。ろう人形で再現された第2次大戦中の宰相チャーチルの姿だ。

 博物館は、ドイツの空襲を受けるロンドンで英政府の作戦本部となった防空壕(ごう)の跡。世界地図が壁中に張られた情報統合室や、チャーチル手書きの日記など、見どころは多い。

 だが、チャーチルが夜な夜なこもって電話をしていた「秘密部屋」ほど、当時の緊迫感を伝えるものはない。電話は専用回線、相手は米大統領ルーズベルトただ1人。ナチス・ドイツが欧州大陸を席巻する中、米国に何とか参戦してもらおうと、ここから切々と危機を訴え続けた。

 「秘密だらけのこの防空壕でも、この部屋は存在自体がほとんど知られていませんでした」と館内の説明員が言う。「『首相専用トイレ』に偽装されていたからです」

 トイレは秘密を隠すのに最適な場なわけか。近ごろ、岐阜市役所で「市長専用トイレ」が設計されて話題になっていると聞いた。何ら隠し事がないことを祈りたい。 (阿部伸哉)

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