2017年06月21日
「なんか用なの?」。地中海の島国キプロスの都市リマソル。ビーチ沿いのしゃれたレストランへ入ろうとして、威圧的な態度の地元ウエートレスに入店を阻まれた。
この町は、タックスヘイブン(租税回避地)と温暖な気候を求め、1990年代からロシア人富裕層が多く流入し、リゾート地として発展してきた。ロシア国旗を掲げ、ロシア語で店名を表記した店も目につく。
しかし、4年ほど前から移住を目指す中国人富裕層が流入し始めた。町には中国語で書かれた不動産仲介の看板が増え、先行するロシア人と新参の中国人の間で、いわば縄張り争いが起きているという。
どうやら「ロシア派」の店でライバルの中国人と間違われたようだ。別の店でも事情は同じだった。後から入ってきたロシア系とみられる客が「なんで中国人がいるのか」と店員にささやいた途端、別のテーブルへと追いやられてしまった。
キプロス紛争から既に40年たった。明かりの消された誰もいない窓際の席で、静かにきらめく夜景に平穏を感じつつも、地中海の十字路を騒がせる中ロの味気ないさや当てをかみしめていた。 (高橋達郎)