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ソウル 変わるか良い就職像

2017年06月16日

 うわさには聞いていたが、実際に耳にするとやはり衝撃的だった。「良い教育を受け、良い大学を卒業し、良い就職をしなければ、良い女性と結婚できない。幼いころからずっと、両親に言われ続けてきた」

 ソウル市江南区が主催した就職説明会に友人2人と参加した大学4年宋碩鎬(ソンソクホ)さん(22)はこう語った。「良い就職」とは、医師や裁判官、大財閥の社員になることだという。

 就職では学歴が最重視され、中小企業の大卒初任給は大企業の6割という韓国。富める親の子は富み、貧しい親の子は貧しいままという格差固定を揶揄(やゆ)する「金のスプーン、土のスプーン」という言葉が流行した。子の塾代に毎月20万円も払う親もおり、格差是正は大統領選でも関心事になっている。

 今の若者は、親とは異なる考え方を好むようでもある。会場に来ていた別の大学4年の男性は「これまで大企業が偏って優遇されてきたが、中小企業の成長を促せば就職の裾野が広がる」と期待する。財閥に依存し過度な教育競争を強いてきた韓国社会は、大統領選を機に、多様な働き方が認められるようになるのだろうか。 (上野実輝彦)