2017年06月27日
10年前、北京で満員の地下鉄に乗ると、耳栓が必要なほど騒がしかった。学校の同級生、会社の同僚、家族、友人、カップル。中国人はだいたい誰かと一緒に行動する。みんな話し好きで、大声で驚き、笑う。
日本に一時帰国したり、出張で米国に行ったりして地下鉄に乗った時、大半の乗客が話さないのを見て「ああ、これが先進国なのかな」と感じた。マナーと孤独がセットになったような光景に映った。
そして最近の北京の地下鉄。ラッシュは激しくなったのに、超満員の乗客たちの会話はむしろ減った。社会全体がせわしくなり、1人で行動する人が増えたためだ。みんな車内で下を向いてスマホを見ている。
以前はエレベーターの中も会話の声が壁に反響するほどうるさかった。最近は「公の空間」を意識するようになり、大声でおしゃべりをしていたグループが、エレベーター内に入ると会話を止めるようになった。
急激に変化していく中国を象徴しているが、無表情でスマホを眺める人ばかりの列車内に立つと、みんな楽しそうに話していたあのにぎやかさを、懐かしくも感じる。 (平岩勇司)