2017年06月29日
休暇でバルカン半島のアルバニアに行った。タクシー運転手に勧められ、中部ベラトのワイナリーへ。バルカンのワイン造りは古代ローマにさかのぼり、最も古い生産地の1つだ。イタリア帰りのオーナー、ムハレム・チョボさんが製造工程、さらにたる、瓶の並ぶ貯蔵庫を案内してくれた。
1900年代初め、ムハレムさんの祖父はこの地でワインを造っていた。しかし、第2次大戦後、アルバニアは共産主義国になり、ワイン生産も国営に1本化。祖父のワイナリーは閉鎖に追い込まれたという。
それから40余年。ベラトにワインをよみがえらせたのは、90年代の民主化と、伝統への思い。「アルバニアのブドウで造りたかった」。消滅寸前だったベラト固有のブドウ品種を栽培し、できたワインを「ベラトの白」と名付けた。
試飲すると、さわやかな香りと、きりっとした酸味が広がった。国際的な賞も受賞した逸品だ。
山あいには鎖国時代のコンクリート製バンカーが残り、政治体制も盤石ではない。でも、誇り高きワインに、アルバニアの未来は明るい、と感じた。 (小嶋麻友美)