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北京 輸入停止にも負けず

2017年07月01日

 「コメを売り込む場なのに。パンフレットしか置くことができないのが残念です」

 「日中国交正常化45年」記念の一環で、北京の日本大使館が日本のコメをテーマに開いたイベント。新潟の担当者は残念そうな表情を浮かべていた。

 会場には日本酒やにぎりずしなどの名産が並び、多くの人が日本のコメの味を実感して楽しんでいた。だが、人気の新潟産コシヒカリを味わうことはできない。東京電力福島第一原発の事故後、中国は放射能汚染の恐れを理由に、新潟を含む10都県からの農産物輸入を停止しているためだ。

 新潟の担当者にとって、今は中国語で書かれたパンフレットの配布が唯一の売り込み方法。科学的な根拠から日本で安全とされたコメでも海外の見方は厳しい。「食の安全」に敏感なのは中国も同じで、原発事故の強烈な印象が今も拭い去れていない証拠だろう。

 それでも将来を見据える担当者の言葉を聞いて少し安心した。「中国では実際に味わってもらうことはできません。でも、興味を持つ人が新潟にコメを食べに来てもらえるように頑張っています」(秦淳哉)