2017年07月06日

　４月のニューヨークの夜はまだまだ寒い。米大リーグ、ニューヨーク・メッツの本拠地、シティ・フィールドで震えながら観戦していた時のこと。数列前にいた白人男性のメッツファン同士が突然、激しい口論を始めた。序盤からメッツが押される展開にいらいらしていたのかもしれない。周囲の仲裁で、何とかその場は収まった。

　しかし、予想通りと言うべきか、数分後には殴り合いのけんかになってしまった。日本での野球観戦で、選手の乱闘騒ぎを見たことはあるが、ファン同士は初めての経験。しかも、双方とも丸太のような二の腕で、なかなかの迫力。周辺の客席からは「出て行け」「警備員を呼べ」などの声が上がり、観戦どころではなくなってしまった。結局、警備員が出動し、２人とも「退席」を余儀なくされた。

　当事者は興奮し、けんかの原因は分からない。でも、米国では「政治と宗教、野球のことを軽々に口にしてはいけない」といわれる。これらの話題になると、人格が変わってしまうようだ。昨年の大統領選でも感情的な支持者を取材したことがあるが、これも米国を支える「熱狂」なのだろう。（東條仁史）