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中国・大連 国産空母 自尊心高め

2017年07月10日

 中国・大連で進水した初の国産空母を見ようと、市内のホテルからタクシーに乗った。

 「次の空母は今、上海で造っている」「最終的に5~6隻になるんだ」と聞かれてもいないのに、運転手はよくしゃべる。「金をかけすぎだよな」と愚痴ったかと思うと「5~6隻じゃ全然足りない」とも言う。

 1隻目の空母「遼寧」が旧ソ連製の中古を改修したものだっただけに、自前で空母を造り上げたことは中国人の自尊心を相当くすぐったようだ。ネット上に「早く米国を追い越せ」といった書き込みがあふれる。

 アヘン戦争以来、100年にわたって国土を蹂躙(じゅうりん)された中国が、国防重視なのは理解できる。しかし次々と空母を建造し、海洋進出を強める姿勢が、国際社会の疑念を招いていることに思いを致す中国人は少ない。

 「新空母は遼寧よりも大きいんだぞ」と自慢する運転手に、「排水量は遼寧の方が上ですよ」と私が言うと「新空母は国産だ!」。反論など許さないという勢いだ。

 港近くに市民が押し寄せ、盛んに空母をカメラに収めている。お祭り騒ぎのようなその光景を横目に、不安も禁じ得なかった。(浅井正智)