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上海 蜜月の象徴ひっそり

2017年07月20日

 石庫門造りの建物が並ぶ上海の観光スポット・新天地の一角に「大韓民国臨時政府」庁舎跡がある。臨時政府は1919年に、日本の植民地支配に抵抗して朝鮮半島で起きた「三・一独立運動」の後、独立運動家が樹立。上海の臨時政府庁舎は26年から32年までの間、独立運動の拠点として使われた。

 庁舎は93年に一般公開。韓国の朴槿恵(パククネ)前大統領が2013年6月、習近平中国国家主席との会談で、独立運動の史跡保護で合意したのを受け、中国側が改修。15年9月の「抗日戦争勝利70周年」に合わせて再オープンした庁舎は、朴、習両氏の蜜月関係を反映した。韓国の聯合ニュースは当時、年間の韓国人来館者は20万~30万人と伝えていた。

 だが、中韓関係は昨年来、在韓米軍への地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)」配備をめぐり急速に冷え込んだ。庁舎を訪れた5月、韓国人来館者はごくわずか。中国人は皆無。案内係の女性は「最近は(客が)少ない」とポツリ。韓国の新政権は、中国との関係修復を模索中だ。来館者で再びにぎわう日はいつ来るだろう。 (城内康伸)