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英マンチェスター 芸術を力に前を向け

2017年07月31日

 若者が多く、創造性豊かな英国中部マンチェスター。テロ事件後、中心部を歩いていたら、コンクリート壁にスプレーを吹き付け絵を描く人たちがいた。

 ハートで囲まれ、ピンク色に染まった街並み。労働者の街を象徴する働きバチと、「恐れない」のひと言。頭をスカーフで覆った女性、ターバンを巻いた男性などいろんな人の笑顔も並んでいる。

 3カ月ごとに塗り替える公共アートのプロジェクトだという。今回は特に思いがこもる。「連帯を表したかった」。アーティストの一人、ジェイ・シャープルズさんは言った。

 パリで起きた同時テロの後、人々が口ずさんでいたのは「武器を取れ」「進め」と士気を高めるフランス国歌だった。マンチェスターの追悼の場で耳にしたのは、1990年代を代表する地元出身のバンド、オアシスの「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」だ。

 怒りをもって振り返るな-。悲しみに暮れるのでも、怒りを何かに向けるのでもない。音楽やアートを力に、前を向くマンチェスター人の強さを、街のあちこちから感じた。 (小嶋麻友美)