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ニューヨーク 自由の国 入れない・・・

2017年08月24日

 にぎやかなニューヨークのカフェでは、聞き取るのがやっとの小さな声。シリア出身のジュアン・アルミラジさん(26)は話し終わり、左手で大きくなり始めたおなかをさすりながら、右手に持った携帯電話の画面を見つめた。相手は夫キャレドさん(35)、半年も離れ離れだ。

 医師のキャレドさんもシリア生まれ。公衆衛生の博士号を取るため、米国の大学に通っていたが、昨年末に休暇を利用してトルコに渡った直後にビザが取り消され、再入国ができない。

 トルコを拠点に、シリア内戦下でポリオ(小児まひ)感染の恐れがある子どもに、ワクチン接種などの人道支援をしてきたキャレドさん。「テロリストと疑われたのか。シリア政権軍に拘束された時よりも、子を授かった妻と一緒にいられない今の方がつらい」。電話の向こう側で、戸惑いながら話した。

 「テロ対策」を理由に、シリア国民の入国に神経をとがらせる米国。「まっとうな医師でもだめだなんて・・・。生まれてくる子どものためにも、どんな人も受け入れてきた米国の理想を取り戻してほしい」。ジュアンさんがそう話した時、声が少しだけ大きくなった。

 (北島忠輔)