【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. アメリカ・カナダ
  5. ワシントン 憎悪が生むのは憎悪

ワシントン 憎悪が生むのは憎悪

2017年08月22日

 急ぎの取材で、タクシーに乗って行き先を告げた後、運転手から思わぬ言葉が返ってきた。「トランプ米大統領はすごい。そう思うだろ」

 タクシー運転手はアフリカや中東などからの移民が多い。この男性運転手も民族衣装を着ていて、米国出身ではないように見える。移民に冷たいトランプ氏を褒めるなんて意外に思って出身地域を尋ねると、ヒンズー教徒のインド人だった。

 支持する理由を聞けば「トランプ氏はイスラム教国に対して入国規制などの厳しい態度を取っているからだ」。イスラム過激派が世界でテロを起こしていると批判をまくし立て、インドと過去に3度の戦争を繰り広げたイスラム教国のパキスタンへの敵意もむき出しにした。

 こちらが日本人と分かると、次の矛先は中国。カシミール地方の領有権問題を説明して「領土拡大のために侵攻する中国は嫌いだ。日本も東シナ海の島を争っているから、中国を嫌いなんだろ」と敵の敵は味方とばかりに賛同を求められた。

 憎しみに満ちた話は目的地に到着するまで十数分続いた。トランプ氏の差別的発言は、心中の憎悪を呼び覚ましている。 (後藤孝好)