2017年09月04日
日産自動車の英国工場があるイングランド北東部サンダーランド。ロンドンからみて「方言がきつい」ことでも知られる。
6月の総選挙取材で訪れたが言葉の違いは想像以上。ローカル電車の車内アナウンスがまったく理解できない。乗客に尋ねたが、それでも分からない。
「これで取材できるか」と不安を抱え、取材先の商工会議所を訪ねると、幸い担当者はロンドン近郊の出身。「ここの言葉はなまりじゃなく、使っている単語が違う」と言われた。不安は恐怖心に変わった。
翌日、市民の声を聞こうと、恐る恐るパブの入り口に立った。中からこちらの姿が見えたのか、ドアが開いてしまった。恥を忍んで打ち明けた。「選挙の取材に来たが、ここの言葉が分かりません」
経営者の男性は「よく来てくれた。分かるように説明してやる」と言い、カウンターで客と一緒に、町の成り立ちからみっちり講義してくれた。使う単語に気を使ってくれるのか、分かりやすい。
方言を恐れていたら、この心の温かさに出会えなかった。ローカル色豊かな英国。1つ殻を破れた気がした。 (阿部伸哉)