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ミャンマー・ヤンゴン 民主活動家 市井にも

2017年10月02日

 ミャンマーの弁護士ロバート・サン・アウンさん(64)が差し出した名刺には「6回投獄された元政治犯」の肩書があった。公平性を表す天秤(てんびん)のマークとともに、少し誇らしげに。

 彼は学生のころから軍事政権の横暴と闘い、弁護士になって民主化運動や人権問題に携わってきた。権力を堂々と批判し、民政復帰した今も「司法システムの独立に関しては、軍政の時からまったく改善されていない」と憤りを隠さない熱血漢だ。

 仕事場は最大都市ヤンゴンにあり、この国では少数派のイスラム教徒が多く住む下町の雑居ビルの2階。資料が床に山積みされ、書棚からは本があふれて雑然としている。訪ねたのは土曜日だったが、依頼者が途切れることなくやってきた。

 部屋の壁に小さな張り紙があるのが目についた。「人権が侵害されたり、法の支配が曲げられたりした場合、無料で代理人を引き受けます」。彼の信念と気概を表す言葉だった。

 民主化の象徴アウン・サン・スー・チーさんや著名な活動家だけでなく、彼のような志の高い人が市井にたくさんいたからこそ、今のミャンマーがあるのだと実感した。 (大橋洋一郎)