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ニューヨーク 腕時計は要らない?

2017年10月19日

 毎日、30秒ほど進んでしまう。愛用している腕時計のこと。日本にいたころは、通勤に使うバスの時間が気になり、毎日のようにネジを巻き直していたものだ。米国で腕時計に目が行かなくなったのは、初めての土地で時間に余裕を持って行動しているからだけではない。

 ニューヨークでは、通勤にも取材にも地下鉄だが、時刻表すら見当たらない駅がざらに存在する。それどころか、次の電車が来るまでの残り時間を示す電光掲示も、当てにならない。

 ようやく来た電車がなかなか発車しないと思ったら、「折り返しになりました」との放送で乗客が一斉に降りたことも。係員にただしても、悪びれるふうもない。「反対側のホームで待っていればいい。じきに次の電車が来る」と。

 だが、それぐらいで驚いてはいけない、と思い知らされたのが最近の報道。ニューヨーク・タイムズ紙によると、地下鉄の遅延や運休は恒常的で、最も混み合う路線で平日の通勤時間帯に予定の本数が運行された実績は2カ月間で「ゼロ」だった。

 米国に来て3週間。気が付けば、腕時計の針は10分も進んでいた。 (赤川肇)