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ワシントン 「反トランプ」堂々と

2017年12月04日

 聞き取れただけでも、英語だけでなく、スペイン語やフランス語、韓国語が飛び交う。親に連れられて子どもの時に不法入国した若者に在留資格を与え、強制送還を猶予してきた制度の廃止決定に抗議する集会は、米国の多様性を表していた。

 トランプ米大統領に反対の声を届けようと、ワシントンのホワイトハウス前に、白人や黒人、アジア系、ヒスパニック(中南米系)らが数百人。支援者の白人らは「移民が米国を偉大にしている」とトランプ氏の公約をからかう看板を掲げる。

 対象者は国外追放におびえて意気消沈しているかと思ったが、8歳の時に家族でメキシコから不法入国したマルティネスさん(29)は「在留資格を失っても闘い続ける」と逆境にもへこたれない。米国で職を見つけるなどして地域社会に溶け込み、国を支えているという自負から、みんな堂々としている。

 企業や大学も、米国の将来を担う貴重な人材として支援を約束し、民主党が強い各州は制度廃止の差し止めなどを求める訴訟を起こした。トランプ氏の排外主義に屈せず、立ち向かう社会の懐の広さこそ、米国の力の源泉なのだろう。 (後藤孝好)