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上海 おしゃべりも治療法

2017年11月21日

 中国の病院では、診察を受けている時に、別の患者も同じ診察室に入ってきてしまうと、人から聞いてはいた。実際に経験してみると、その違和感たるや相当なものである。

 体調を崩した妻に付き添って上海市内の病院に行った時のこと。妻の受診中、すぐ後ろに次の患者とおぼしき中国人のおばさんが座っていた。中国の病院でも受け付け順に診察の順番が決まるが、割り込みが多く、順番を抜かされていないか不安な人たちが診察室に入ってきてしまうようだ。

 おばさんは女性医師と妻のやりとりを全部聞いている。「早く終われよ」と顔に書いてある。診察室のドアも開いている。「患者のプライバシーを尊重してください」というドアに張られた注意書きがむなしい。

 もっとも、病院で嫌な思いだけが残ったわけではない。担当の女性医師は話し好きで、雑談も交え、妻の話をきちんと聞き、気持ちをほぐしてくれた。

 「おしゃべりで患者を安心させることも、漢方の治療法の1つなのかな」と妻。たまたま親切な先生に当たっただけだろうが、そう思うことにしよう。 (浅井正智)