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ワシントン 心地よく完走した訳

2017年12月07日

 蒸し暑さの残る9月中旬、首都ワシントンで開かれた「米空海軍ハーフマラソン」を走った。日々の暮らしで感じる日米の違いはレースでも鮮明だった。

 スタート前の式で米国歌「星条旗」が流れた。トイレで並んでいようが、準備体操中だろうが、皆さっと直立、胸に手を当てたのには感心した。日本のレースもずいぶん走ったが「君が代」を聞いたことはない。

 号砲が鳴った。拍手や歓声を上げながらスタートラインを越えるのは日本と同じ。その後の沿道では、あらゆる励ましの言葉が飛び交う。

 日本なら「がんばって」だが当地では「グッドジョブ(いいぞ)」「ルッキンググッド(かっこいいよ)」など。その人を鼓舞し、困難を乗り越えてほしいとの願いも込めた「がんばれ」に相当する英語は見当たらない。代わりに走者の姿を積極的に、前向きにたたえる。

 こんなに褒めちぎられるのは結婚式以来か。応援のおかげで気持ち良く完走できた。ゴールラインを越え、ゲートを振り返り深くおじぎをした。周囲は不思議そうな顔をしていたが、日本流の謝意の形を見てもらえたならうれしい。 (石川智規)