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ロンドン 迷惑に羊たちも沈黙

2017年12月14日

 英紙フィナンシャル・タイムズで、英国出身の俳優アンソニー・ホプキンス氏が特集されていた。サスペンス映画「羊たちの沈黙」での連続殺人犯レクター博士役はあまりに有名だ。

 紙面から目を上げ、支局の英国人スタッフ2人にこう話し掛けた。「あの映画、素晴らしかったね。『ザ・サイレンス・オブ・ザ・シープ(Sheep)』」。

 2人は腹を抱えて笑い始めた。「シープ? それじゃ、まるでコメディー映画だ」。正しい英語タイトルは「The Silence of the Lambs」。確かに作中、ラム(子羊)は鍵となる。

 しかし、シープ(羊)の何がそんなにおかしいのか。聞けば、英国でシープとは、自分では何も考えず、他者に追従する人の例えらしい。羊飼いに追い立てられる群れの姿に由来する。雑誌に掲載された服ばかり着る人に「おまえ、シープか」と。

 では、と尋ねた。「食べて寝てばかりいると何になると思う?」。きょとんとする2人。「カウ(牛)」と言うと「カウになんてならないよ」とまた笑った。これは日本で行儀悪さをいさめる例え。こういう会話、羊も牛も、いい迷惑に思っているかも。 (沢田千秋)