2018年01月23日
ベンガル湾に日が沈むころ、見渡す限り続く砂浜は、ひときわ美しく輝く。バングラデシュ南東部のコックスバザール。125キロにわたる砂浜は、世界最長を誇る。
「本当にきれいな夕日。でも・・・」。国連児童基金(ユニセフ)職員のロビンソン麻己さんは続けた。「昼間、悲惨な現実を見た後だと、複雑な気持ちになるんです」。ロビンソンさんは、隣国ミャンマーから逃れてきたイスラム教徒少数民族ロヒンギャの支援活動をしている。
美しい砂浜から数キロ離れた難民キャンプでは、迫害を受け、家族や知人を亡くした人たちが、不衛生な環境で、身を寄せ合って暮らしているからだ。
砂浜から望む海も、時に悲劇の場となる。多くの難民がミャンマーから、夜の闇に紛れて小さなボートで国境越えを図る。
だが、ベンガル湾の波に洗われ、転覆するボートも少なくなく、犠牲者が出ている。
8月下旬以降、ミャンマーを出る難民は増加を続け、60万人を超えた。解決の道筋はまだ見えない。彼らが安心して故郷へ帰り、支援者たちが心から夕日を楽しめる日は、いつ来るのだろうか。 (北川成史)