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ロンドン 冬告げる大輪の花火

2018年02月05日

 突然の爆音にテロ発生かと身構えた。10月下旬、大きな打ち上げ花火が何発も上がった。バルコニーでポカンとする私。「一体何なの…」

 理由は英国の風習「ボンファイア」だった。1605年、プロテスタントの国王の下、異端だったカトリック信者が国王の爆殺を計画。実行直前の11月5日、地下坑道で火薬を見張っていたガイ・フォークスが逮捕され、拷問の末、処刑された。

 この日は「ガイ・フォークス・デー」となり、当初はフォークス人形を市中引き回しの上、燃やしたが、次第に市民が花火を上げるようになった。それが10月下旬から11月上旬まで上がるボンファイアだ。英国では、ボンファイア、大みそか、中国の春節の時期だけ、市民の打ち上げ花火購入が許可されている。

 いよいよ、クライマックスの5日の夜。それは、見たこともない光景だった。見渡す限りのロンドンの町中で、色とりどりの打ち上げ花火が何100発、何時間も上がり続けた。夏場は夜10時まで明るい英国で、花火は夏の風物詩ではない。長く暗い冬こそ花火を楽しむ。ボンファイアは冬の到来を告げ、人々を鼓舞する号砲だ。 (沢田千秋)