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北京 カメがサギの道具に

2018年02月23日

 中国で時々変わった人に出くわすことがある。体長30センチはあろうかと思う生きたカメを連れている男性もその1人だ。ひもでつながれたカメは本人のペットのようにも見えるが、男性は路上に座ったまま一言も発しないから、カメを連れている理由がさっぱり分からない。

 「あれは一種の詐欺ですよ」。中国の知人に尋ねると意外な答えが返ってきた。男性はカメに興味を持った人が声を掛けるのを待ち、意気投合した時を見計らって「このカメを食べると万病に効く。もし必要ならば売ってあげてもいい」と高値で持ち掛けるのだという。

 もちろん実際は何の効果もない。それでも長寿に効果があると聞けば、ついだまされる人もいるらしい。売り手はあえて汚れた服を着て、地方の川や湖で捕獲したように振る舞うとか。

 知人は「ネットで注意が呼び掛けられ、本当に買う人は少ない」と笑う。だが、経済成長に伴って健康への関心は高まるばかり。日本でも「がんに効く」と偽って摘発されるケースが後を絶たないのと同じか。詐欺に利用されるカメもいい迷惑だろう。伸びた首にある目が物悲しく見えた。 (秦淳哉)