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米ラスベガス 最先端技術より人情

2018年04月17日

 年初に家電見本市「CES」取材のため、米ラスベガスを訪れた時のこと。ホテルから会場に向かおうとしたが、タクシー乗り場は長蛇の列。じりじりしながら順番を待っていると、小型のバスがやってきた。

 「急いでいる人は、あのバスへ」とホテルの従業員。私を含め報道陣ら20人ほどが駆け寄った。営業形態はよく分からず怪しげなのだが、女性の運転手は「全員で300ドル(約3万3000円)集めてほしい」と要求。仕切り役を名乗り出た白人男性がバスの入り口で1人ずつ集金することになった。

 そして、最後に並んでいた私の番。男性に「いくらですか」と聞くと「もう300ドル集まったから、君は払わなくていい」とのこと。すでに乗車していた先客から拍手で迎えられ、隣席の白人女性は「ラッキーだったわね」と笑顔をみせた。

 会場に到着すると、スマホで自動運転の無人タクシーを呼ぶような「近未来」が広がっていた。現実になれば、バス内で経験した人間同士の楽しい会話もなくなってしまう-。こんな思いにふけるのは、最新技術についていけない「アナログ派」のひがみだろうか。 (東條仁史)