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中国・丹東 なれなれしい不審者

2018年04月23日

 中国東北部・遼寧省丹東市は鴨緑江を挟んで、北朝鮮・新義州(シンウィジュ)と向かい合う国境の街。中朝関係の現状を取材するためには、機会をとらえて足を運ぶことが重要だ。ただ、中国当局も記者の動きには神経を使っており、公安関係者のけん制に遭うこともある。

 「やあ、先輩!」。氷点下5度、しんしんと雪が降る街中を先日、探索していると、小太りで黒いジャンパー姿の30代半ばとみられる男が突然、声をかけてきた。

 「久しぶり。この前、一緒にサウナに行ったじゃない。ところで、今日はどこに行くの?どこに泊まっているの?」。なれなれしく尋ねてくるが、目は笑っていない。言葉は韓国語だが、北朝鮮の言葉の響きもある。

 全くの初対面。「あんたなんか知らないよ。勘違いだ」と首を振っても、「忘れちゃったんだよ」と返し、決してそばを離れない。私が別の都市に向かう列車に乗るために丹東駅の入り口をくぐるまで、機関銃のような早口で話し続けて付いてきた。

 あの愛想のいい不審者。果たして、何者だったのだろう。今も、気になる。 (城内康伸)