2018年04月20日
ニューヨーク市の建物は大半が禁煙なので、喫煙者の多くが路上で吸う。私もその一人なのだが、たばこが高額なためか、頻繁に「一本くれ」とせがまれる。そのたびに「これが最後の一本」と断るようにしている。
先日もマンハッタンの目抜き通り・5番街沿いに歩いて吸っていたら「一本ください」の声が。「またか」と思って声の主を見ると、何と昨年末に取材したホームレスの白人男性ランスさん(27)だった。
取材した場所とは違う。「引っ越し」をしたらしい。実は取材した際、謝礼名目で現金を渡そうか迷った。日本では個人的に取材先に金品を渡すようなことはしなかったので、そのまま立ち去ったのだが「困っている人だし、あげても良かったかな」と少しばかり後悔していた。
そんな経緯もあったので、自ら禁を破って一本差し出し「年末に会った日本の新聞記者だけど覚えている?」と聞いた。ランスさんは、顔を見て思い出したようで「ありがとう」と笑顔でたばこを受け取った。昨年秋に仕事を解雇され、ホームレスになったランスさん。早く仕事を見つけて、自分でたばこを買えますように。 (東條仁史)