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ポーランド・オシフィエンチム 人間の愚かさ物語る

2018年04月27日

 アウシュビッツの第2収容所ビルケナウで、ナチスに連行されたユダヤ人が最初に入った最奥部の建物を見学し、帰路に向かおうと振り向いて急に心細くなった。さっき擦れ違った大勢の見学者が1人も見当たらない。敷地があまりに広いのだ。

 当初は政治犯の収容に、その後ユダヤ人ら推計110万人の虐殺に利用された第1~3収容所の規模の大きさ、費やされた人、カネ、資材など途方もないエネルギーを思い、圧倒された。

 展示コーナーでは、小さな白い靴に目がとまった。ようやくよちよち歩きができるぐらいの子ども用の靴。ここで大勢の子どもの命が奪われた。

 冷酷さはもちろん、頭に浮かんだのはあまりの愚かしさ。当時、ナチスはユダヤ人抹殺の必要性をさまざまに並べ立てた。しかし、巨大な施設に欧州一円から人を連行し、抵抗できない子どもまで押し込む。それが戦況打開や困窮の改善に何の役目も果たさないことは、あの白い靴の子を閉じ込めた看守も分かっていたはず。

 理性を失う恐怖は、どんな文明国にも潜んでいるのだろう。70年以上前の施設が雄弁に物語っていた。 (垣見洋樹)

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