2018年05月13日
フランス北部のカレーに到着し、宿泊予定のビジネスホテルに入ると、屈強な男性が10人ほど、ロビーでテレビのサッカー中継に見入っている。画面を見ると、パリ・サンジェルマン対レアル・マドリードというフランスとスペインの名門対決だ。
「お客さんもどうです」と受付の女性に勧められて立ち見を始めたが、落ち着かない。というのも、男性たちは全員、防弾チョッキをまとい、腰に拳銃をぶらさげていたからだ。
背中には「GENDARMERIE」の文字。その意味はフランス語の「国家憲兵隊」だ。ロビーの外の「駐車禁止」の路上には、堂々と2台の軍車両が乗り付けられている。
明らかに勤務中。日本では考えられない風景だが、ロビーはガラス張りで外から丸見えだから、罪悪感などはなからなさそうだ。ホテルも防犯対策で歓迎のようだ。
お目当てのサンジェルマンが連続失点すると、彼らは「あー」と残念そうにうなり声をあげて、試合途中だが中継を切ってしまった。そして、ヘルメットをかぶり直し、夜の街のパトロールへ出動。あぜんとする私を取り残して。 (阿部伸哉)