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ロンドン 多様性 地で行く男性

2018年05月21日

 同業他社の記者2人とロンドンにあるレバノン料理店に出かけた。隣のテーブルには1人で来た白人男性。英語で注文後、おもむろに広げたのは、なんと日本の新聞だ。好奇心旺盛な記者軍団は早速話し掛けた。

 男性はハンガリー出身。パリの航空会社に勤め、出張でロンドンを訪れていた。

 外交官だった父親の仕事でモスクワ在住時、日本語に出合ったという。「4歳の時、道端で拾った紙切れに書かれていた文字が日本語だと分かり、夢中で勉強した」。父親が日本勤務となり、10代のころ、東京で5年間暮らした。男性の日本語、特に敬語は堪能で美しかった。

 私たちのテーブルに招き、話は盛り上がる。男性は米国の航空会社勤務時に9・11米中枢同時テロに遭遇した。米国で男性と結婚し、自宅も購入した。「主人の仕事がパリに変わって、私もパリで仕事を見つけた」。同性婚が認められていない日本育ちとしては、男性の「主人」という言葉はくすぐったかった。

 別れ際、「旦那さんによろしく」と言った時、私の世界も少し広がった気がした。ミスター多様性との出会いに感謝。 (沢田千秋)