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モスクワ 「顔出しNG」の親心

2018年06月09日

 モスクワ市内の産婦人科医院で、出産した女性に話を聞き、赤ちゃんを抱いた写真を撮らせてもらうことになった。

 撮影イメージは赤ちゃんの安らかな寝顔とそれを見つめる母親。ところが、母親は赤ちゃんを自分の胸にうずめ、一向に顔を見せてくれようとはしない。

 看護師に尋ねると「生後40日間は赤ちゃんの顔を撮影してはいけないんです」という。母親は「写真を見る人の中には、悪い気を持つ人もいる。それが赤ちゃんに伝染してはいけないから」と理由を教えてくれた。

 ソ連時代は出産祝いに来た人にさえ、顔を見せなかったほど徹底していたという。ロシア人の知人によると、表向きの理由とは別に、風習は発育を取り巻く環境の厳しさを物語る。年々改善されているとはいえ、ロシアの乳児死亡率は日本の3倍。お披露目はある程度、順調に育ってからということだ。

 第二次世界大戦やソ連崩壊で出生数が激減した時代を経て、ロシア人は「子は宝」という意識が強い。スマホの普及で、自撮りが日常になった時代でも残る風習。子の健やかな成長を願う気持ちは、いつも変わらないと感じた。 (栗田晃)

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