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香港 「のどかな休日」実は

2018年06月15日

 香港島の北にある緑豊かなビクトリアパークは、香港最大級の公園。当地の休日に足を運ぶと、公園西側の木陰は、頭部をスカーフで包んだ何百人もの東南アジア系の女性で埋め尽くされていた。

 「阿媽(アマ)」さんと呼ばれるメイドとしてインドネシアから来た出稼ぎ労働者たちだ。インターネットで、ビクトリアパークを検索してみると、阿媽さんについて「メイドの仕事からしばし解放されて、休日を過ごしている」という「のどかな」印象の説明をみつけた。

 ところが、香港に長らく住む事情通によると、事情が違うらしい。「彼女らは住み込みで働いているのだけど、休日になると雇い主が家族だけで過ごしたいと、家から追い出すのです」

 月給は4000香港ドル(約5万4000円)程度だ。物価の高い香港で、しかも本国に仕送りする彼女たちには、お金を出して遊ぶ余裕はなく、行き場を失って終日、公園で過ごしている。

 弁当や菓子を食べながら、生活の情報を伝え合ったり、屈託のない表情で話の花を咲かせている光景には、実は、厳しい現実が潜んでいるのを初めて知ったのだった。 (城内康伸)