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ニューヨーク 名演説の引き立て役

2018年06月19日

 米国の公民権運動を主導したマーチン・ルーサー・キング牧師が凶弾に倒れてから50年を迎えた4月4日、全米各地で大小さまざまなデモや追悼行事が繰り広げられた。やはりと言うべきか、故人の引き立て役になったのがトランプ米大統領だ。

 ニューヨーク・クイーンズ区の街頭集会では、暗殺前日の演説が引用された。「米国をあるべき姿にする挑戦の日々を進もう」。ある男性がトランプ氏の「米国を再び偉大にしよう」という決めゼリフを引き合いに「似て非なるものだ」と訴えると、聴衆が笑いと拍手で応えた。

 高校生のアンドレス・アギレラさん(17)は「理不尽を前に何も言わないのは同意と同じ」と声を上げる大切さを語った。

 移民や女性への差別的発言、銃規制への消極姿勢で論争を呼んでいるトランプ氏。キング牧師の長男(60)は「時計の針を巻き戻すかのような言葉が、人々を突き動かしている」とみる。

 もしかして、と想像した。あえて国民の分断をあおるような言動を繰り出し、その反動で融和を図る-。トランプ氏が確信犯的に悪役を演じているとすれば、それはそれで合点がいく気もするのだが…。 (赤川肇)