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韓国・高城 線路の先ははるか遠く

2018年06月23日

 線路は続くよどこまでも・・・とのどかに口ずさむには、あまりに寂しい風景だった。北朝鮮の金剛山(クムガンサン)観光への経由地だった韓国最北の町、江原道(カンウォンド)の高城(コソン)郡にある南北出入事務所を訪れた時のことだ。

 韓国と北朝鮮の東海岸沿いを南北に結ぶ鉄道「東海線」は2000年代初め、南北交流として、再連結事業が始まり、列車の試運転も行った。

 だが関係悪化で08年に中断。韓国側の最終駅・猪津(チェジン)から北へ延びる線路は今、ところどころ隆起したまま整備されておらず、近くて遠い南北関係を象徴するかのようだった。

 今年に入って南北が急接近し、事務所の禹季根(ウゲグン)所長は「政治決断があれば鉄道事業も再開できるだろう」と期待する。ただ20代後半の韓国人は「旅先としての北朝鮮に興味はあるが郷愁は感じない。10代、20代はこんなものですよ」と淡泊だ。

 40代前半のツアーガイドは「北朝鮮に関して若者が持っているのは、メディアから得る『変な国』という情報のみだ」と分析する。鉄道の運行が始まり北朝鮮の人々と接触すれば、若者の意識も少し変わってくるだろうか。 (上野実輝彦)