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中国・杭州 悲劇が遺した「譲る心」

2018年06月27日

 中国浙江省の省都・杭州市で信号のない横断歩道を渡ろうとすると、車が一時停止して私を通してくれた。別の横断歩道でも同じことが起こった。

 普段の生活でこういう経験はまずないから、ほとんど感動ものである。第一、この国には「歩行者優先」の発想がない。強者が大手を振って闊歩(かっぽ)する。

 杭州っ子の女性は「歩行者に道を譲るのは中国全土で杭州だけ」と胸を張る。本当かどうかは不明だが、興味を引かれたのはこの習慣が定着した理由だ。

 9年前、地元の20代の男性が青信号で道路を横断中、車にはねられ死亡した。当初の警察は、車は時速70キロで走っていたと発表。後に85~100キロだったと訂正した。「運転していた男の家庭は裕福で、警察を丸め込もうとした」とネット上でうわさが広がり、社会問題に発展。同時に「若者が犠牲になる事故を繰り返さないように」と信号がない道でもドライバーは道を譲るようになったという。

 失われた命は二度と戻ってはこない。しかし遺(のこ)された「杭州モデル」が地元でしっかり根づき、国各地にも波及していくなら、亡くなった男性もきっと浮かばれるだろう。 (浅井正智)

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