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タイ・ラヨーン 果樹園に横たわる格差

2018年06月30日

 生まれて初めて、果物の王様といわれる「ドリアン」が木になっている様子を目にした。

 取材で訪れたタイ中部のラヨーンにある観光果樹園で園内ツアーに参加。トラクターが引く客車に乗って、バナナやマンゴスチンの木々を眺めながら、のんびり回る。

 ドリアンは高い木の枝に、多い時は5個ぐらい固まってぶら下がっている。トゲだらけの実は長さ30センチほど、重さ1キロ以上で、頭を直撃したら笑えないなと思いつつ、写真を撮った。

 木は高さ2、30メートルまで成長するのだが、果樹園では枝を切り、10メートル前後に抑えているという。はしごに登って、収穫しやすくするためだ。

 興味深い説明の後、果樹園のタイ人従業員はポツリ。「ただタイ人は収穫しないけどね」

 危険な作業に携わるのは隣国カンボジアからの労働者。タイは建築現場などの3K労働をカンボジア人やミャンマー人に頼る。人手不足を補う半面、一部の職場では低賃金や労働環境の過酷さが指摘されている。

 訪れた日、果樹園は家族連れでにぎわっていた。だんらんの場にも、国境を越えた格差が横たわっていた。 (北川成史)