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ニューヨーク 映像は語る…雄弁に

2018年06月26日

 職場で仕事中、近くの飲食店がテレビニュースに映った。客らしき白人男性が憤激した様子で「ここは米国だ」と店員に詰め寄っている。5月に起きたあの“事件”。居合わせた人が録画した映像をインターネットの投稿サイトで公開し、人種差別問題として報じられている。

 映像は雄弁だった。男性は別の客とスペイン語で話していた店員に「英語で話すべきだ」と苦言。さらに「彼らは不法移民ではないか。私の国から追い出してやる」と続けた。

 男性は企業法務専門の弁護士(42)だ。法律事務所のホームページでは「スペイン語が流ちょう」と自己PRしていた。ある企業はこの騒動を受けて「彼の考え方には気づかなかった。がくぜんとしている」と代理人契約を解消したという。

 弁護士とはいえ市井の人。顔出し、実名報道はやはり気の毒だと思っていたら、男性は1週間後、謝罪声明を出し「あの映像が伝えていないのが本当の私だ」と微妙な自己弁護。しかし公衆の面前で他人を「醜いクソ外国人」とののしった前歴まで暴かれてしまう始末。「本当の私」は一層劣勢に立たされることになっている。 (赤川肇)