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イスラエル・エルサレム 「首都認定」の副産物

2018年08月01日

 米国大使館のエルサレム移転の取材で訪れたイスラエル。パレスチナ側の緊迫感とは程遠い様子で、知人が「そんなことより、もっと楽しい取材しなよ」と見せてきた映像は、もう1つの歴史的出来事だった。

 欧州国別対抗歌謡祭「ユーロビジョン」でイスラエル人歌手ネッタ・バルジライさん(25)が優勝した。彼女の曲「Toy」は、セクハラ告発運動「#MeToo(私も被害者)」を連想させるような「私はあなたのおもちゃじゃないのよ、この愚か者」といった歌詞が繰り返される。

 ステージに招き猫を並べ、日本の着物のような衣装を着たバルジライさんは大柄で、いわゆる「美人」ではない。優勝トロフィーを受け取ると「違いを受け入れてくれて本当にありがとう」と歓喜に浸った。

 ユーロビジョンは優勝国の首都が次回開催地となる。バルジライさんは「来年はエルサレムよ!」と叫んだ。欧州では、パレスチナ占領への抗議を表明するボイコット運動が盛んだ。音楽コンサートも例外ではない。果たして来年、欧州各国は出場するのか。これもまた、トランプ米大統領の「首都認定」がもたらした副産物になりそうだ。 (奥田哲平)