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ロンドン 地下鉄で味わう酷暑

2018年09月19日

 すし詰めの地下鉄車両が、小さな窓から生ぬるい風をかき込みながら走る。その救いの風もがっくんという不自然なブレーキとともに止まる。車両がたびたび「信号故障」により、駅間で立ち往生してしまうのだ。

 世界的な猛暑で、涼しいはずのロンドンでも連日30度超え。エアコンがない建物や鉄道車両が多く、30度程度でも思いのほか体にこたえる。地下鉄の駅では「飲み水を持って乗車してください」と呼び掛けているが、冷房のない満員電車に閉じ込められると、息詰まる暑さで恐怖心さえ芽生える。

 立ち往生を引き起こす「信号故障」とは、何なのか。ロンドン交通局に問い合わせると、列車間の距離を測る線路上のシステムが雨やレールの摩耗により狂うのだという。BBC放送によると英国全土の鉄道で、100分以上の遅れを伴う信号故障は年に1万9000件も起きている。

 鉄道の生みの親といえる英国で、世界初の地下鉄がロンドンで開通したのは1863年。残念ながら老朽化が目立つ。歴史には敬意を払いつつも、異常気象が続く折、エアコン導入と信号システム改良を願わざるをえない。 (阿部伸哉)