2018年10月08日
バルト3国の一つ、ラトビアの首都リガは「バルトのパリ」とも呼ばれる欧州の雰囲気と旧ソ連風の建築物が混在する。
ロシア系住民が4割住むリガにあるロシア語新聞の編集部を訪れた。編集長は2004年に欧州連合(EU)に加盟したことを「ラトビアにすごくいいことだった」と手放しに礼賛。「ロシア語を話しているからといって、ロシア寄りの報道をしているわけではない」と言う。
しかし、手元の新聞には、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島の写真が1面を飾り、「クリミアへの旅」との見出し。もちろんEUはロシアを批判する立場で、この件を発端とした対ロシア経済制裁もいまだに続く。
思わず「ほかのEUの国ではこんな1面はありえないだろう」と言うと、編集長は「なぜだ」と反論。むしろ「現場を訪れるのがジャーナリズムだ。それができないのは検閲じゃないか」と気色ばんだ。
記事を読めば旅行記程度。「ご都合主義」の言い分にあきれたが、小国が欧州とロシアの間で生き抜く複雑な背景を考えると、それを責める気にはなれなかった。 (栗田晃)