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カンボジア・シエムレアプ 揺らぐ日本の存在感

2018年10月15日

 8月中旬、世界遺産アンコールワットのあるカンボジア北西部シエムレアプを訪れた。

 ここを初めて訪れたのは、長い内戦が終わって間もない1994年。当時と様変わりし、兵士の姿は街中になく、大型ホテルが並び、飲食店街が広がる。

 アンコールワットの表玄関にあたる西参道は上智大の主導で修復工事が進んでいた。脇のお堀に浮かぶ迂回(うかい)路の桟橋を観光客が絶え間なく行き来する。

 気軽に訪問できる観光地になったのも、90年代前半、日本などが関与し、和平と総選挙が実現した成果と言える。

 カンボジアと浅からぬ縁のある日本だが、存在感の面では変化にさらされている。

 トゥクトゥク(三輪タクシー)に乗り合わせた観光ガイドの女性は「観光客数は中国が1番、欧米が2番。日本はその次かな」と話した。投資額や支援額のデータを見ても、中国は日本を含む他国を引き離している。

 有力野党弾圧後の7月の総選挙の結果、カンボジアは事実上、与党の一党独裁になった。中国が後ろ盾となる中、どう向き合うのか。トゥクトゥクで揺られながら、日本の課題が頭をよぎった。 (北川成史)