2018年11月05日
失礼ながら、一瞬、たちの悪い観客に絡まれたのかと身構えた。「あなたは日本の記者なの?」。米国人女性レジーナ・プラットさん(41)は怒っていた。
テニスの全米オープンのシングルスを日本勢で初めて制した大坂なおみ選手(20)。ニューヨークの試合会場で表彰式後、取材に応じてくれる観客を探していると、「決勝戦、どう思った?」と逆取材を受けた。元女王セリーナ・ウィリアムズ選手(36)の敗戦に納得できないのかと思いきや、そうではなかった。
憤りの矛先は、セリーナ選手への度重なる警告に反発し、晴れ舞台である表彰式をもブーイングで包んだ大勢の観客たち。「米国の恥よ」。あの反応が全てかのように報じられるのが我慢できなかったのだろう。筆者のペンを取り、書いた。「USA Loves Osaka!(米国は大坂選手が大好き)」
数日後、談話が載った紙面をプラットさんに送ると、お返しに大坂選手と2人で並んだ写真を送ってくれた。大会期間中、ホテルのエレベーターで出くわした際の1枚だ。大坂選手の自然な笑みは、人々を引きつける理由が強さだけではないことを物語っていた。 (赤川肇)