2018年10月30日
人生初の薬物検査だった。米テキサス州と国境を接するメキシコの町シウダフアレス。幹線道路を車で走っていると「ミリタリー・チェックポイント」との看板が目に入った。
なんじゃそりゃ。訳がわからぬまま、周囲の車にならって停止すると、迷彩服を着たメキシコ軍の兵士が「3番のゾーンに行け」とスペイン語で話した。小脇に抱えたマシンガンがあまりに大きく、息をのんだ。
車外に出されると、兵士はドア脇の内装を軽くたたき、シートをはがしながら薬物を探す。白い粉入りの袋などない。だが心はざわつく。ひととおり車内を調べ終わると無罪放免。
不思議と、私のズボンや上着は調べなかった。ポケットに薬物を入れれば、容易に持ち込めることになるが…。
メキシコ事情に詳しい知人がこう教えてくれた。「大量売買を防ぐのが彼らの狙い。個人で楽しむ分には問題ない」。戸惑う私に、彼はこう続けた。
「キミは幸運だった。兵士がポケットに仕込んだ袋を出して『これは何だ』とやられることもあり得たんだ」。真偽のほどは不明だが、一瞬、さもありなんと。ご用心。 (石川智規)