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ベルリン 100マルクの使い道

2018年11月15日

 東西ドイツ統一から28年となる10月3日、ベルリンのブランデンブルク門一帯は大勢の人々でにぎわっていた。ビールや食べ物の屋台が立ち並び、ステージではライブも。ただ広大な会場の周囲はフェンスで囲われ、中に入るには手荷物検査を受けなければならなかった。

 統一に関連した展示もあり、気になったのは屋外に並べられた多数のショッピングカート。統一前、東側から西側に入ると銀行などで「歓迎金」と呼ばれる現金が支給された。100マルク(当時7000~8000円程度)で人々は何を買ったのかがカートの上に載せたパネルに描かれていた。

 リーバイスのジーンズ、マクドナルドのハンバーガー、日本製のゲーム機。当時を振り返るコメントに、西側の消費社会へのあこがれがあふれていた。同じ品物でも店によって値段が違うことに驚く人もいたという。

 唯一、空のカートを描いたパネルがあった。「西側が最初に東側に提示したのは政治参加ではなく消費だった。歓迎金によって東側を買い取ろうとするように思えた」。統一の高揚感の一方、そこには事実上の吸収合併に対する旧東ドイツ国民の抵抗が垣間見えた。 (近藤晶)