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ドイツ・ミュンヘン 市民意識を読み違え

2018年11月30日

 2000席以上はあろうかという巨大なビアホールは、どこか重苦しい空気が漂っていた。ドイツ南部バイエルン州議会選の取材で訪れた州都ミュンヘン。このホールは、世論調査で大敗が予想されていた保守与党キリスト教社会同盟(CSU)の選挙集会の会場だった。

 弁士は姉妹政党キリスト教民主同盟(CDU)のメルケル首相ではなく、国境を接するオーストリアのクルツ首相。難民政策を巡り対立するCSU党首のゼーホーファー内相とメルケル氏の溝の深さを物語っていた。

 バイエルン州は、中東などからの難民がオーストリアを経由してドイツに入る玄関口。ゼーホーファー氏としては、難民政策の厳格化で協調姿勢をアピールしたかったのだろうが、極右政党と連立を組むクルツ氏の応援は逆効果だったようだ。

 CSUの敗因は、極右政党に流れた支持者を取り戻そうと強硬な難民政策を打ち出し、中道支持層の離反を招いたこと。ミュンヘン市内では難民に寛容な「90年連合・緑の党」が圧勝した選挙区もあった。離れた支持者に今後どう訴えていくのか、CSUの党勢立て直しは容易ではなさそうだ。 (近藤晶)