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インドネシア・パル 寝付けぬ被災地の夜

2018年11月27日

 余震に体を揺らされ、他の記者たちと一斉に寝袋から飛び出し、庭に避難する。ひと晩に何度か繰り返した。被災地に向かう前に車に積んだ水やビスケットを分け合い、食いつないだ。

 9月下旬、マグニチュード(M)7・5の地震と津波に襲われた直後のインドネシア・スラウェシ島中部のパルで、営業を停止したホテルが好意で開放した敷地内で、さまざまな国からの記者らと野宿した。

 1階の外廊下に寝床を確保したが、崩壊した数多くの建物を取材で見た後だけに、天井の下にいるのは落ち着かなかった。だが、本震を肌で感じた住民の不安とは、比較にならないだろう。屋内を嫌い、軒先に張ったブルーシートの下で夜を過ごす家族を至る所で目にした。

 10月上旬に現地を離れた時、行方不明者の捜索や復旧作業は迅速に進んでいなかった。インドネシアは11月から4月ごろまで雨期に入る。感染症の恐れも増し、被災者に野外での暮らしを強いるわけにはいかない。

 死者2000人を超えた惨事は、政府の津波観測態勢の不備など人災の側面も浮かぶ。せめて事後の対応で最善が尽くされるように願う。 (北川成史)