2018年12月19日
戦火と軍靴で荒れたベルギーの戦場に、最初に咲いたのが真っ赤なケシの花。そして11月初旬の英国では、街行く人も政治家もテレビのアナウンサーもケシの造花を胸に着ける。
11月11日の第一次世界大戦終戦記念日に向けた追悼のシンボルで、終戦100周年の今年は例年より目立つ気がする。
退役軍人の支援組織「ロイヤル・ブリティッシュ・リージョン」が行う募金活動の一環。第一次大戦には英国も参戦し、約90万人が命を落とした。
支援組織によると、ケシの花を身に着けることの起源は大戦に赴いたカナダ人医師の詩にある。兵士の墓をケシが埋めた-という詩の冒頭部分を、米国の慈善団体が追悼の象徴として使い、やがて英連邦諸国にも広がったのだという。
だが当の米国はというと、ケシの花は定着していないし、戦場だったベルギーの戦争博物館で聞いてみたところ「あれは英国人の風習」と素っ気なかった覚えがある。
普段は同調圧力を好まない英国人が、一斉に同じケシの造花を胸に着ける。戦没者慰霊のためなのだが、正直、やや意外に感じられた。 (阿部伸哉)