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ベルリン 終戦100年祈り静か

2018年12月25日

 手を握り、額を寄せ合うドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領。第一次世界大戦終結100年を前に、仏北部コンピエーニュで行われた式典をテレビの生中継で見た。2人が記帳した「休戦の客車」では2度、休戦協定が結ばれている。

 第一次大戦で伝令兵だったヒトラーは敗戦の22年後、第二次大戦でドイツの独裁者としてフランスに休戦協定の署名をさせた。第一次大戦で休戦協定締結の場所だった客車を、保存していた博物館の壁を壊して移動させ、同じ客車での署名にこだわった復讐(ふくしゅう)心は計り知れない。

 ナチスの蛮行を伝える施設や追悼碑はドイツに数多くあるが、第一次大戦に関するものは少ない。終戦100年の公式行事もなかった。100年の節目を迎えた日、ベルリン南部にある兵士の墓地を訪れた。整然と並ぶ墓石には、第一次大戦の4年間「1914~1918」の文字。だが、手向けられた花は1つもなかった。

 墓地にあるベンチに30代らしいカップルがいた。誰かを追悼するために来たのかと尋ねると、2人は言った。「戦争に勝者も敗者もない。きょうはすべての犠牲者に祈りをささげる日だから」 (近藤晶)