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中国・深セン 都市の多様性残して

2019年02月15日

 「深センをひと言で言うとどんな都市?」。深センで開かれたハイテクフェアで知り合った中国人に聞かれ、言葉に窮した。

 2010年以来、3回目の訪問。当時から高層ビルは林立していたが、香港から陸路でイミグレーション(パスポート審査)を越えると、ほこりっぽく猥雑(わいざつ)な感じがした記憶がある。

 今回の深センは少し違う。香港と面しているだけでなく、中国のシリコンバレーと呼ばれ、ドローン開発などベンチャー企業などが集まる先進地となった。地下鉄はピカピカで、タクシーやバスも多くがEV。街行く人のファッションも歩行者信号の音も香港と変わらず、繁華街は香港かと錯覚するぐらいだ。

 しかし、路地を入ると、昔の深センが顔をのぞかせる。道端の店や屋台から串焼きや鍋のにおいが漂い、出稼ぎの農民工が汗水流して働き、その子どもたちが夜中も走り回っている。

 結局、答えたのは「発展とともに美しく」。政治面では一国二制度が形骸化し、香港が大陸にのみ込まれる危険性が現実味を帯びる中、生活面の多様性がある。香港の美しい暮らし文化は大陸側に広がってほしい、そう心の中で続けた。 (安藤淳)